【第14回】介護スタッフのキャリアパスや副業、経営者としておさえるべきポイントは?

介護業界は処遇改善加算で社員のキャリアパスが決められている非常に珍しい業界です。国によって介護業界に従事している人のキャリアパスは確立されているわけですが、これによる弊害はないのでしょうか?また、給与が低いといわれる介護業界ではスタッフの副業や掛け持ちといった問題もあります。経営者はどういったポイントに気を配るべきなのでしょうか?

介護業界のキャリアアップ=管理職

―――― 今回は、介護業界で働く人のキャリアパスについて、お話を聞かせてください。

三浦先生 教介護業界でのキャリアアップ・キャリアパスというと、ピラミッド型の組織の中で上にあがっていくことを指します。いわゆる管理職になることがステップアップです。実は、ここに大きな問題があるんです。介護業界は資格業です。社会福祉士やケアマネージャーは上級資格とされていますが、この資格を持っている人=人の上に立ってマネジメントができる、というわけではないですよね。

―――― 上級資格を持っていることと、実務としてマネジメントができるのは違うということですね。

三浦先生 そうです。さらに、最近は世間一般でもマネジメントをやりたい人間が減っていると言われています。特に、介護で働く人たちは、「人助けをしたい」という気持ちが強い傾向にありますので、マネジメントに興味がある人が多くないのも仕方がないのかもしれません。

従業員の価値を給与で表すのは難しい

―――― 他業界ではステップアップの先として、マネジメント以外にスペシャリストとしてひとつの職能を極める道もキャリアパスとして出てき始めていますが、介護業界にはそういう流れはないでしょうか?

三浦先生 介護の場合は介護報酬で上限が決まってしまうので、例えばケアマネージャーとしてものすごく優れた人がいたとしても、その人の価値を給与という形で還元することが難しいんです。しかしながら、介護業界には、キャリアパス要件を整備すると介護報酬がもらえる『介護職員処遇改善加算』(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/housyu/kaitei29.html
という制度があります。

引用元:全国老人福祉施設協議会「キャリアパスガイドライン(素案)」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/10/dl/tp1023-1f.pdf

真の人材育成は制度だけではダメ

―――― こういったものを社内で整備するだけで国から報酬をもらえるなんて、一般企業では考えられません。

三浦先生 そうだと思います。国としても介護業界には期待したいんです。しかし、介護報酬の問題があり、なかなか難しい。そこで、キャリアアップ制度でスタッフの質を上げた施設には、処遇改善加算によって報酬を還元しましょう。そして、その報酬でキャリアアップをした従業員の賃金を上げられるようにしましょう。という流れです。ちなみに、処遇改善加算の導入は、あくまでも基本であり、9割以上の事業所が導入しています。重要なのは、その会社らしいキャリアアップの方法と、「この会社でキャリアを積んでいきたい、昇進していきたい」と思わせるようなモチベート施策もしっかりと考えておくこと。それがないと真の人材育成はできないと感じています。

―――― 介護業界は賃金をなかなか挙げられない、ということでしたが、そうなると副業やパートの掛け持ちなども起こりそうです。そのあたりはいかがでしょう?

三浦先生 就業規則で禁止にしている事業所が多いかもしれませんが、シフト制の仕事なので副業を認めやすい業界だとは思います。他業種では、リクルート系列の企業やIT業界、広告業界などで、働き方改革の一貫として副業解禁にした企業も増えていますよね。

副業解禁のリスクとメリット

―――― 副業を認めた場合の会社側が気をつけるべき点などはありますか?

三浦先生 副業解禁におけるリスクとして経営者の皆さんに知っておいてもらいたいのは、複数の会社で働かせると、過重労働になる可能性があるという点です。例えば、A社で週40時間、B社で月50時間程度働いている従業員がいた場合、労働基準法上では、どちらかの企業が1.25倍の賃金を払わなくてはいけません。つまり会社としては、副業先での労働時間もきちんと管理しておかないといけないのです。

―――― 労働時間は、副業先と合算して考えるんですね。

三浦先生 副業を許可するのであれば、管理方法や働く側の視点もしっかり考えておくべきでしょう。例えば、労働時間の管理をしやすくするためにグループ会社内のみ副業OKとする、というのはどうでしょうか。グループ会社で介護事業以外のことをやっているなら、働く側も仕事の幅が広がりますし、福利厚生のひとつとしても扱えそうです。また、地元地域の企業同士で副業コミュニティを作るのもおもしろいかもしれません。資本関係などがなくても勉強会などで出会った異業種の会社と組んで、管理方法や働く人が不利にならないルールをしっかりと整備してあげれば、可能性は広がりそうですよね。労務管理をきちんと行うことを大前提とすれば、雇用のシェアは働く側にとっても雇用側にとっても非常に大きな意味があるのではないでしょうか。

<次回予告>
第15回のテーマは「介護業界の賃金事情」。
3月5日(月)更新予定です。
お楽しみに!

三浦 修先生プロフィール

【資格】
・社会保険労務士 ・2級FP技能士(ファイナンシャルプランナー)
・全米NLP協会公認プラクティショナー
・LABプロファイル(R)プラクティショナー

【役職】・クロスフィールズ人財研究所(社会保険労務士事務所)代表 http://www.cf-labo.jp/
・一般社団法人 医療介護経営研究会(C-SR)代表理事 http://www.c-sr.jp/
・社労士の実務経営を考える会 主宰 http://sr-keiei.com/
・一般社団法人 マイナンバー推進協議会 顧問 https://www.mynumber.or.jp/

【プロフィール】
2003年社会保険労務士試験合格後、税理士法人さくら優和パートナーズに会計監査担当として従事。会計事務所では会計監査業務(特に医療介護)、はじめ税務調査対応等、社会保険労務士業務等幅広く経験。その後2008年8月にクロスフィールズ人財研究所開設、現在に至る。

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