3分でわかる介護経営

【第12回】真の法令遵守が、離職率の低下につながる

投稿日:2017年12月25日 更新日:

採用難や離職率の改善は、介護業界にとって喫緊の課題です。どのような職場環境にすることが、人手不足の解消につながるのでしょうか。労務管理のお立場から、社会保険労務士の三浦先生にお話しをお聞きします。

スタッフが安心して働ける環境とは

―――― 介護業界の人手不足は深刻です。具体的には、どのように職場環境を目指せば良いのでしょうか。

三浦先生 離職率の改善のためには、やはりスタッフが安心して働きやすい環境を作ることが第一でしょう。そういった環境づくりに対する策は色々あると思いますが、経営者がきちんと法令を遵守しているかどうかという点が、実は大きなポイントにとなります。

―――― 法令遵守とは、いわゆるコンプライアンスですよね? 具体的にはどのような法令を遵守しなければならないのでしょうか?

三浦先生 介護事業所が遵守すべき法令は数多くあるのですが、まずは介護保険法を守るのが最優先です。これについては、だいたいの事業所は守れているでしょう。しかし、労働基準法や労働契約法にまでおよぶと、事業所や経営者によって、遵守のレベルには差があるのではと思っています。

形式のみではなく実質的な遵守を

―――― 遵守のレベルというのは、その実行の方法や内容、ということですか?

三浦先生 法律上の判断基準には、形式基準と実質基準という考え方があります。介護事業のような許認可事業では、形式基準で判断される場合が多いため、そちらを守っている事業所は多いと思います。ですが、遵守されるのは形式だけで本当に良いのでしょうか。

―――― つまり、書面などの形式を整えているだけはダメだと。

三浦先生 そうです。労働契約書や就業規則がイメージしやすいと思います。こういった書面を作るだけ、スタッフに渡すだけ、で良いのか? ということです。

―――― 通常の企業ですと、そういうイメージがありますね。

三浦先生 私が考える「法令遵守」とは、例えば就業規則であれば、雇用する側・される側で互いに理解できるような配慮や説明がしっかりとされていること。さらには、就業規則の内容自体も、形式的なものではなく自社のために一生懸命考えた上で作られている、ということです。単に書面を整えるだけではなく、きちんと理解したうえで実質的に運用していくことで、初めて労務管理上の安心につながっていくと考えています。

独自のルール作りも大切

―――― 実質的に運営するというのは? 規則をどのように運用していくか、ということですか?

三浦先生 法律上の難しい知識に関しては私たち社労士がサポートしますが、実際の運用については、その中身や本質を理解した上で、事業所独自のルールを作って頂きたいです。例えば、「同一労働同一賃金(非正規雇用労働者の待遇改善のための施策 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html)」が、働き方改革でも論点になっていますが、介護事業所のスタッフは、非正規雇用のスタッフが多いのも特徴です。また、高齢の従業員も少なくないため経営者や上司のほうが若く、接し方が難しいということもあるかもしれません。そういった部分のケアについては、法律で定められた通りに行ってもうまくはずはないですよね。ですから、そこから一歩先に進んで、スタッフのそれぞれの立場や役職、年齢などに合わせた役割分担やルールを設定してみてはいかがでしょうか。

従業員への誠意を示す

―――― それぞれの従業員の特徴や従業員同士の関係性についても理解していないと難しい取り組みですね。

三浦先生 就業規則ひとつとっても、しっかりと中身を整理し理解したうえで、誠意をもってスタッフひとり一人に対応すべきでしょう。そして、そういった経営者の姿勢をスタッフの方たちが理解することによって、安全で安心な職場環境が作られ、定着率の向上や離職率の低下につながるのだと思います。

―――― 法律についての勉強、そしてスタッフと日々向き合うことが必要不可欠だと。

三浦先生 そうなんです。介護事業の運営というのは、とにかく変化の多い介護関連の法律を常に追いかけ、経営者として必要な法律も理解し、その上コミュニケーション能力が求められるという、非常に難易度の高い職業です。もっともっと世の中にフォーカスされるべき職業だと、私は声を大にして言いたいですね。

<次回予告>
第13回は「介護業界の研修について考える(仮)」をお届けします。
お楽しみに!

三浦 修先生プロフィール

【資格】
・社会保険労務士 ・2級FP技能士(ファイナンシャルプランナー)
・全米NLP協会公認プラクティショナー
・LABプロファイル(R)プラクティショナー

【役職】・クロスフィールズ人財研究所(社会保険労務士事務所)代表 http://www.cf-labo.jp/
・一般社団法人 医療介護経営研究会(C-SR)代表理事 http://www.c-sr.jp/
・社労士の実務経営を考える会 主宰 http://sr-keiei.com/
・一般社団法人 マイナンバー推進協議会 顧問 https://www.mynumber.or.jp/

【プロフィール】
2003年社会保険労務士試験合格後、税理士法人さくら優和パートナーズに会計監査担当として従事。会計事務所では会計監査業務(特に医療介護)、はじめ税務調査対応等、社会保険労務士業務等幅広く経験。その後2008年8月にクロスフィールズ人財研究所開設、現在に至る。

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