3分でわかる介護経営

【第10回】介護現場のトラブル、その予防と対応(2)利用者とスタッフ

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前回に引き続き、介護の現場で起こるトラブルについてお伺いしていきます。今回は、利用者と施設側とのトラブルについて教えて頂きました。

利用者とのトラブル

―――― 前回は、スタッフ同士のトラブルについて、その予防策や対処法を教えて頂きました。今回は、利用者とのトラブルについてお聞かせください。

三浦先生 まず、多いのが金銭に関わるトラブルです。お金が盗まれるという話は結構耳にしますね。なかでも、本当は盗まれていないのに「お金がなくなった」と利用者が言い出すケースがあるのですが、その方が認知症だと、事態を収束するのが大変困難です。

―――― 対策はあるのでしょうか。

三浦先生 未然に防ぐのは難しいですが、防犯カメラや介護用の見守りカメラは有効でしょう。個室内に付けられない場合も、廊下などにつけておくことで部屋への入退室や、施設内でのある程度の行動は把握できますよね。実際に、そういったカメラやシステムを設置している施設は増えているようですよ。

―――― そのほかにも金銭のトラブルはありますか?

三浦先生 今後、懸念されるのが利用料の未払いです。現在、介護保険で受けられるサービスは1割負担ですが、このまま少子高齢化が進めば、利用者の負担額を2~3割へと引き上げざるを得なくなるでしょう。そうなると、入居費用などを払えないというケースが出てくる可能性がありますよね。現に、医療業界では、医療費の未収金問題で弁護士が対応しなければならない事例も出てきています。

虐待・暴力の問題は?

―――― 最近よく耳にする、介護スタッフから利用者への虐待・暴力について教えてください。

三浦先生 残念ながら、スタッフから利用者への虐待や暴力は起こっています。また、あまり知られていないようですが、利用者からスタッフに対する暴力や暴言なども行われています。施設側にとって利用者はお客様であり、利用者側はお金を払っているという意識から、横暴になってしまう人もいるのかもしれません。利用者が介護スタッフを怒鳴ったり蹴り飛ばしたりするシーンは、現場ではたびたび見られるようです。

―――― スタッフは我慢して耐えるしかないのですか?

三浦先生 介護事業も経営ですから、他の施設への移動をほのめかされたら、文句は言いにくいかもしれません。ですが、より良い環境や風土を作るためには、施設側も利用者を選ぶべきだと私は思います。

―――― お客様だからと迎合するのではなく、毅然とした対応をするべきだと。

三浦先生 スタッフ個人での対応は難しいと思います。ですから、まずはそういった状況をスタッフから上司へきちんと報告するというコミュニケーションが必要になりますよね。その上で、報告を受けた上司や経営者が、対象の利用者に対してしかるべき対応をとるべきだと思います。そういった経営者の態度が、ハラスメントやトラブルが起きにくい組織風土を作り上げるのではないでしょうか。実際に、問題を起こした利用者に出ていってもらったという施設もあるようです。

―――― セクハラについてはどうでしょうか?

三浦先生 暴力同様、利用者からスタッフへもあるでしょうし、逆にスタッフから利用者に対してもあるようです。入浴介助の際などは身体の触れ合いは必然的に増えますし、訪問介護の場合は他人の目もなく密室状態になりますから、セクハラが起こりやすい状況ではありますよね。

―――― 介護には不可欠な作業や状況なので、避けることは難しそうですね。

三浦先生 予防することはできると思います。利用者と同性の介護士が介助を担当することで、セクハラの可能性は格段に低くなるのではないでしょうか。虐待や暴力の予防については、利用者とスタッフとの関係性を見直してみてはどうか、というのが私の考えです。

―――― 具体的には、どういった点を改善するべきですか?

三浦先生 介護の現場では、介護スタッフが利用者に対し、子供に接するような態度や話し方をしている場面をよく見聞きします。しかしながら、利用者の大半が介護スタッフよりも年齢が上なはずです。それに、利用者はあくまでもお客様です。通常なら、当たり前のように敬語が使われる場面なのです。

―――― 介護をしてあげている、と思ってしまうのでしょうか。

三浦先生 距離感を縮めるために敢えてそういった接し方をしているのかもしれませんが、利用者からすれば、上から目線で言われていると感じてしまう可能性もあますよね。その一方で、そういった点にいち早く気付き、利用者には基本的に敬語を使う、挨拶はきちんと立ち止まってする、などを実施している施設もあります(介護付有料老人ホーム ホスピタルメント桜十字 http://www.hospitalment.co.jp/sakurajyuji/cmad/)。言葉遣いや態度から環境は作られますから、一度、真剣に見直しを検討してみてもいいかもしれません。施設内で起きるトラブルは多々ありますが、経営者の姿勢、施設の風土、スタッフそして利用者のモラルが、すべてにおいて重要なのだと思います。

<次回予告>
次回のテーマは「働き方改革について(仮)」。
12月11日(月)更新予定です。
お楽しみに!

三浦 修先生プロフィール

【資格】
・社会保険労務士 ・2級FP技能士(ファイナンシャルプランナー)
・全米NLP協会公認プラクティショナー
・LABプロファイル(R)プラクティショナー

【役職】・クロスフィールズ人財研究所(社会保険労務士事務所)代表 http://www.cf-labo.jp/
・一般社団法人 医療介護経営研究会(C-SR)代表理事 http://www.c-sr.jp/
・社労士の実務経営を考える会 主宰 http://sr-keiei.com/
・一般社団法人 マイナンバー推進協議会 顧問 https://www.mynumber.or.jp/

【プロフィール】
2003年社会保険労務士試験合格後、税理士法人さくら優和パートナーズに会計監査担当として従事。会計事務所では会計監査業務(特に医療介護)、はじめ税務調査対応等、社会保険労務士業務等幅広く経験。その後2008年8月にクロスフィールズ人財研究所開設、現在に至る。

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