【第9回】介護現場のトラブル、その予防と対応(1)スタッフ同士

【第9回】介護現場のトラブル、その予防と対応(1)スタッフ同士

介護の現場で実際に起きているトラブルと、その予防策や対処法について二回にわたりお話をうかがっていきます。今回はスタッフ間のトラブルについて。社会保険労務士の立場からご意見を聞きました。

介護現場のトラブルとは

―――― 介護の現場では、どんなトラブルが起きているのでしょうか。

三浦先生 介護施設でのトラブルは、大きくふたつに分類されます。ひとつは施設で働くスタッフ同士のトラブル、もうひとつは利用者や利用者家族が関わってくるトラブルです。

―――― では、まずスタッフ同士のトラブルについて教えてください。

三浦先生 パワハラやセクハラといった問題は多いですね。介護施設はシフト制とはいえ24時間体制なので、同じメンバーが同じ空間で一緒に過ごす時間が長くなりがちです。加えて、チームワークが必要になる仕事も多いので、ストレスが溜まりやすいのかもしれません。また、利用者の介助の際など、他業種に比べて身体同士が接触する機会が多いのも、要因のひとつと考えられます。一般的に、閉じられた空間で仕事をする職場は、ハラスメント系のトラブルは多くなる傾向にあります。

研修と定期的な面談で、離職率の改善も

―――― ハラスメントに対しての予防策はありますか?

三浦先生 まずは、ハラスメント研修をすることです。一般的なガイドラインをもとに、どういう行為をするとパワハラやセクハラと受け取られるのか、そして問題を起こしてしまった場合はどうなるのか、法的にはどうなるのか、ということを具体的に伝えましょう。過去に起きた事件・事故についての知識を与え、「ハラスメントとは何か」ということを、きちんと周知することが予防につながると思います。

また、人事評価という形で経営者がスタッフを評価する以外に、スタッフの困っていることや相談ごとを聞く機会を意識的に作ることも非常に有効です。四半期または、少なくとも半年に一度は面談の場を設けることをお勧めします。最近は上司が自分の仕事をどう評価しているかを知りたがる若い人も多いと聞くので、離職率の改善にもつながるのではないでしょうか。

ハラスメントが起きにくい組織風土づくりが大切

―――― 日常的にできる対処法はありますか?

三浦先生 スタッフとのコミュニケーションを大事にすることです。日常的に一人ひとりときちんと向かい合っていくことで、些細な人間関係の問題に気付くこともできるようになります。そこで重要なのが、どんなに小さな問題でも、見て見ぬふりをしないこと。大きな問題に発展する前に問題の芽を摘んでおくことで、ハラスメントが起きにくい組織風土を作ることができると思います。

―――― そのほか、経営側が気をつけるべきことはありますか。

三浦先生 意外と見過ごせないのが、男女関係のトラブルです。

―――― スタッフ同士の交際、ということでしょうか?

三浦先生 もちろん交際をしているだけでは懲戒対象にはなりません。ですが、そのふたりの間の揉めごとが、ほかのスタッフや施設全体を巻き込むような大事になる可能性も無きにしも非ず、なのです。従業員だけでなく、利用者の方々にも迷惑が及ぶような事態になってしまうと、減給や出勤停止などの懲戒対象になったり、最終的には辞職に追い込まれたりする場合もあります。人事管理・労務管理の観点から考えると、男女間のトラブルは、決して軽視できないのです。

スタッフとのコミュニケーションが一番の予防策

―――― ですが、事前に防ぐことは難しそうですね。

三浦先生 プライベートに関することなので、注意喚起をすることは難しいと思います。「過去にこの施設で何か問題が起きたのでは」「あの施設はスタッフのプライベートに口を出す」などの風評被害に繋がる可能性もあり、施設としてマイナス評価につながる危険性もあります。ただ、配置転換が可能な規模の大きい施設であれば、事前対応としてふたりを別々の部署等に異動させることは有効かもしれません。しかし、事前に対応するためには、日常的にスタッフの言動をある程度把握しておく必要ありますよね。つまり、ハラスメント問題同様、施設内で起こるトラブルに対応するためには、日頃から経営者が誠意を持ってスタッフと向き合っていくことが一番大切なのではないでしょうか。

<次回予告>
第10回は「介護現場のトラブル、その予防と対応(2)利用者とスタッフ」をお届けします。
11月27日(月)更新予定です。
お楽しみに!

三浦 修先生プロフィール

【資格】
・社会保険労務士 ・2級FP技能士(ファイナンシャルプランナー)
・全米NLP協会公認プラクティショナー
・LABプロファイル(R)プラクティショナー

【役職】・クロスフィールズ人財研究所(社会保険労務士事務所)代表 http://www.cf-labo.jp/
・一般社団法人 医療介護経営研究会(C-SR)代表理事 http://www.c-sr.jp/
・社労士の実務経営を考える会 主宰 http://sr-keiei.com/
・一般社団法人 マイナンバー推進協議会 顧問 https://www.mynumber.or.jp/

【プロフィール】
2003年社会保険労務士試験合格後、税理士法人さくら優和パートナーズに会計監査担当として従事。会計事務所では会計監査業務(特に医療介護)、はじめ税務調査対応等、社会保険労務士業務等幅広く経験。その後2008年8月にクロスフィールズ人財研究所開設、現在に至る。

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