【第5回】深刻な人手不足、介護業界が今やるべきことは?

【第5回】深刻な人手不足、介護業界が今やるべきことは?

介護経営に詳しい社会保険労務士の三浦先生にお話しを聞くコーナー。第5回となる今回は、介護業界が抱えるもっとも大きな課題ともいえる“人手不足”について詳しくお伺いします。

―――― 介護業界が抱える課題は何でしょうか?

三浦先生 一時期までは離職率の高さが課題と言われていました。今後も離職率の問題はありますが、いかに良い人材を採れるようにするかが重要です。厚生労働省によれば2025年に向けて介護人材が30万人不足するといわれており、人手不足は否めません。

―――― 離職率が高いということを逆手にとって、回転率を高くして人件費を抑えるという考え方もあるようです。

三浦先生 それは数年前までの話。仮にそういうやり方をしたとして「次の人が採用できますか?」ということなんです。特に規模の小さい施設ほど採用が厳しくなっています。今は人が採れないことが問題なので、「採用した人に長く勤めてもらうにはどうしたらよいか」という考えにシフトすべきでしょう。

―――― なるほど。人の採用や定着率と向き合う必要があると。

三浦先生 はい。厳しい言い方かもしれませんが、人の確保はすべて経営とつながっているので、正直「これをやればうまくいく」というウルトラCはありません。これからの介護は、そんな甘ちょろいものではないんです。
これを理解していただいたうえで、では何をやるべきか?

私のように人事・労務をあずかっている人間から言わせると、やはり職場環境を整えることですね。他社と比較して自社のほうがいい状態にできるよう、従業員・介護スタッフにフォーカスした改善に取り組む必要があります。

―――― 職場環境というのはコミュニケーション面?

三浦先生 それもありますし、マネージャーや経営者の姿勢もです。各々が自分の役割をしっかりと考え、従業員のマネジメントをするための学びを深めることも、今まで以上に必要になっていくと思います。

―――― 従業員の年齢層も幅広いですし、マネジメントは大変そうです。まとめる立場の人たちに学ぶ姿勢が必要というのもうなずけます。他には?

三浦先生 給与・賞与・退職金、そして福利厚生です。ひとつ覚えておいて欲しいのは、介護業界は100%健康保険に加入しているということ。他の業界では社会保険に入っていないケースもありますが、介護では社会保険完備は当たり前なんです。だからこそ給与と福利厚生の整備がポイントになります。

―――― 他社と比較をする際に、給与は1番わかりやすい指標ですよね。

三浦先生 そうです。例え「どんぐりの背比べ」だったとしても、A社よりB社のほうが1万円給与が高いというのは大事です。

実際、小規模の施設に比べて社会福祉法人や医療福祉法人は定着率がいいんですね。彼らは公益性が高そうというイメージに加え、資金力があるので給与水準をあげられます。さらに退職金制度や人事評価制度なども整っています。こういったことは採用面でもアピールできるので、人も集まります。

―――― そこと比較されると、企業体力がないところは厳しいですね。小規模の施設でもできることはありますか?

三浦先生 給与や退職金を少しでもいいから右肩あがりしてあげることは、どこの企業にも必要だと考えています。

そこまで資金力がなかったとしても、401K(確定拠出年金)を利用した退職金制度なら可能かもしれません。2,000円か5,000円か2万円か金額はわかりませんが、会社として毎月積み立てて、あとは従業員の皆さんが自分たちで運用を考えていくというやり方です。定期的に教育機関を呼んで、運用についての勉強会をやってあげるといいですよね。

―――― なるほど。福利厚生はいかがですか?

三浦先生 介護業界は全体的に福利厚生が未整備です。今であれば介護休業や育児休業の整備、施設内に託児所を設置するなどが取り上げられますが、少人数でやっている介護施設ではシフトに穴をあけられないからという理由もあり休暇制度も整っていません。シフトの問題を解決するには人をたくさん雇う必要があるので、ここでも資金力という話になりますが……。ただ、福利厚生は健康保険や厚生年金基金など法律で定められているものと、それ以外があり、それ以外というのは工夫次第なんです。

例えば、保険や住宅ローンなどの相談が受けられるライフサポートでもいいし、産業医のメンタルヘルス相談が無料で受けられる、◯歳以上の女性は健康診断時に女性疾病の検査が会社負担で受けられるというものでもいいですよね。従業員や介護スタッフと「どんなサービスが欲しいか」を話し合い、楽しみながら作っていけばいいのではないでしょうか。

<次回予告>
第6回は「外国人労働者や介護ロボット、介護業界の未来」をお届けします。
9月18日(月)更新予定です。
お楽しみに!

三浦 修先生プロフィール

【資格】
・社会保険労務士 ・2級FP技能士(ファイナンシャルプランナー)
・全米NLP協会公認プラクティショナー
・LABプロファイル(R)プラクティショナー

【役職】・クロスフィールズ人財研究所(社会保険労務士事務所)代表 http://www.cf-labo.jp/
・一般社団法人 医療介護経営研究会(C-SR)代表理事 http://www.c-sr.jp/
・社労士の実務経営を考える会 主宰 http://sr-keiei.com/
・一般社団法人 マイナンバー推進協議会 顧問 https://www.mynumber.or.jp/

【プロフィール】
2003年社会保険労務士試験合格後、税理士法人さくら優和パートナーズに会計監査担当として従事。会計事務所では会計監査業務(特に医療介護)、はじめ税務調査対応等、社会保険労務士業務等幅広く経験。その後2008年8月にクロスフィールズ人財研究所開設、現在に至る。

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