3分でわかる介護経営

【第4回】社労士の選定は慎重に

投稿日:2017年8月21日 更新日:

社会保険労務士の先生に介護事業の運営についてお話をうかがうコーナー第4回。今回は、経営の経験のない方が起業する際のアドバイスや、社労士との関わり方について教えて頂きました。

―――― 介護事業の起業家の中には、介護現場出身の方も多いと思います。そういった方たちは、経営についてのノウハウのない方もいるのではないでしょうか?

三浦先生 経営の知識や経験がない起業家の方たちの中には、経営者向けの講演やセミナーに行けば解決すると思っている方も少なくないでしょう。ですが、それだけではどうしても視野が狭くなってしまいます。私の個人的な意見としては、地域で行われている町おこしのようなイベントに足を運ぶべきだと思っています。そこには、高齢者から子供まで、さまざまな世代の人達が集まりますよね。そこで、人々が何に対して、どう反応するのかを学び、ご利用者様やそのご家族を喜ばせるに何ができるのか、という視点を持って事業運営を考えていくべきだと思います。

―――― 経営ノウハウは、机上の空論ではなく足で稼げ、とうことですね。

三浦先生 地域貢献という意識は経営者として常に忘れてはいけないテーマだと思いますので、地元の色々なところへ足を運んで地元を知ることは非常に大切です。また、地方によっては噂話が広がりやすかったり、SNSの普及で情報が簡単に漏れたりする時代なので、地元の人々と向かい、真正直に取り組んでいかないと継続するのが難しい業界のひとつだと思います。

小手先で通用する業界ではない、ということです。

―――― 一般的なサービス業とは違い、取り扱うのが人であり、生命ですから、非常にデリケートですね。

三浦先生 サービス業の中でも、美容室の美容師や飲食店の調理師のように、技術力によって差が出る業界ではないですよね。もちろん、介護福祉士や社会福祉士など国家資格をお持ちの方が多いですが、資格取得者の技術に頼るというよりも、働く方々の経験や知識、仕事に対する気持ち、利用者様たちへの想い、というところがサービス内容、ひいてはその施設のイメージに大きく影響していると思います。

つまり、現場スタッフのモチベーションをいかに上げ続けることができるのか。これが非常に重要になるのではないでしょうか。

―――― どのようなことをすれば、従業員のモチベーションをあげられるのでしょうか?

三浦先生 ひとつの策としては、開業時に定めている会社独自のルールや就業規則、労働時間・勤怠・給与などの基本的なこと、そして会社の理念や方針を、定期的にスタッフにレクチャーすることです。実はこれ、以前、介護事業を成功させている若い経営者の方に、私がお願いされたことなんです。レクチャーの内容的には本当に基礎的なことなのですが、この“定期的に”ということがポイントということでした。

―――― 確かに、入社時のきちんとした研修や説明会もない企業も多いですし、たとえ入社時に聞いたとしても、実際の業務が始まってしまうと、徐々に忘れていってしまいます。

三浦先生 これには私たち社労士も目から鱗でした。基本的に従業員は入れ替わりがあるものだし、中途入社も多いので、以前勤めていた事業所とルールの違いがあるのも当然。そこを、社労士事務所と連携して、定期的に説明会や研修会を開催することで、スタッフへの意識づけを促したいということでした。

―――― 働く側としても、きちんと教育してもらっている、ケアされている、という気持ちになりますね。

三浦先生 このルールや方針自体も、一年おきぐらいに見直すのもいいと思います。

―――― 経営理念やルールは変えてもいいものなんですか?

三浦先生 私もそう思い込んでいたのですが、法律的に全く問題ないとのことです。良く考えると、働く人が変われば組織自体も変わっていくし、時代も社会もどんどん変化していきますよね。そんな中で会社の決まり事だけ昔のままというのは、おかしな話なんです。

その時代やその時期に働いている従業員に合わせてルールや目標を更新することで、働く側のモチベーションを保つことに繋がり、定着率の向上も見込めるのではないでしょうか。

―――― 正直、社会保険労務士の先生には、助成金の相談や雇用関連、社会保険関連の申請などをお願いするだけのイメージでしたが、そういうこともお願いできるんですか?

三浦先生 料金設定はそれぞれだと思いますが、こういった事業運営についても一緒に考えて取り組もうという意志を持った社労士事務所にお願いすることをお勧めします。一度、顧問契約をすると長いお付き合いになります。そして、どんなお付き合いの仕方でも顧問料は毎月支払い続けるのです。だとすれば、介護経営に詳しくて積極的に支援してくれたり、ご自身の経営理念に共感してくれるような社労士を顧問として迎えたほうが、断然いいいと思いませんか?

―――― 社労士や税理士というと、紹介された人とそのまま顧問契約、というイメージでした。そういう社労士の先生と出会うにはどうすればいいのでしょうか。

三浦先生 知人からの紹介も結構ですが、それ以外にも何社かから提案をもらって直接面談してください。どんなサービスをしてくれて、価格はいくらか。その中から、ご自身の事業パートナーとしてふさわしい人と契約をすればいいんです。業者から何か買う際に、相見積もりを取るのと一緒です。それを嫌がるような社労士とは、そもそも事業パートナーにはなれないですからね。

あと、最後にもうひとつ。顧問料についてですが、プロとして自信があるサービスをしている自負があれば、それなりの対価を設定するはずです。なので、顧問料の安すぎる社労士事務所には気を付けてくださいね(笑)。

<次回予告>
第5回は「深刻な人手不足、介護業界が今後やるべきことは?」をお届けします。
9月4日(月)更新予定です。
お楽しみに!

三浦 修先生プロフィール

【資格】
・社会保険労務士 ・2級FP技能士(ファイナンシャルプランナー)
・全米NLP協会公認プラクティショナー
・LABプロファイル(R)プラクティショナー

【役職】・クロスフィールズ人財研究所(社会保険労務士事務所)代表 http://www.cf-labo.jp/
・一般社団法人 医療介護経営研究会(C-SR)代表理事 http://www.c-sr.jp/
・社労士の実務経営を考える会 主宰 http://sr-keiei.com/
・一般社団法人 マイナンバー推進協議会 顧問 https://www.mynumber.or.jp/

【プロフィール】
2003年社会保険労務士試験合格後、税理士法人さくら優和パートナーズに会計監査担当として従事。会計事務所では会計監査業務(特に医療介護)、はじめ税務調査対応等、社会保険労務士業務等幅広く経験。その後2008年8月にクロスフィールズ人財研究所開設、現在に至る。

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